「デートで映画を見に行く」という視点からおすすめ映画を紹介するデート的映画批評シリーズ。
今回は、ベネチア国際映画祭の金獅子賞を獲得した名匠「ギレルモ・デル・トロ」監督が作品の監督・脚本・製作を手がけた究極のファンタジー・ロマンス映画、シェイプ・オブ・ウォーターをご紹介します。
言葉を話せない女性と半魚人との究極の純愛の物語ですが、R+15指定となっていているシェイプ・オブ・ウォーター。R+15指定となっているシェイプ・オブ・ウォーターは誰にでもデートにおすすめできる作品ではありませんが、ちょっと考えさせられるような映画や伏線を読み解いていくような映画が好きなカップルはデートにおすすめの作品です!映画の後のお喋りが止まらなくなること間違いありません。
シェイプ・オブ・ウォーターのあらすじ
原題 | The Shape of Water |
製作年 | 2017年 |
製作国 | アメリカ |
配給 | 20世紀フォックス映画 |
上映時間 | 124分 |
映倫区分 | R15+ |
1962年、米ソ冷戦時代のアメリカで、政府の極秘研究所の清掃員として働く孤独なイライザ(サリー・ホーキンス)は、同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と共に秘密の実験を目撃する。アマゾンで崇められていたという、人間ではない“彼”の特異な姿に心惹(ひ)かれた彼女は、こっそり“彼”に会いにいくようになる。ところが“彼”は、もうすぐ実験の犠牲になることが決まっており……。
シェイプ・オブ・ウォーターの評価
シェイプ・オブ・ウォーターはかなり高い評価を受けた作品です。
2017年の第74回ベネチア国際映画祭の金獅子賞受賞・第90回アカデミー賞では同年最多の全13部門にノミネートされ、作品、監督、美術、音楽の4部門を受賞しました。
まさに、映画好きだったら見ておくべき作品と言えます。
シェイプ・オブ・ウォーターがR+15指定の理由
究極の純愛の物語であるもののR+15指定されている、シェイプ・オブ・ウォーター。その理由は、官能的な場面とグロい場面があるからです。
具体的には結構生々しいセ〇〇スシーンだったり、かなり痛そうな拷問を受けていたりするシーンです。このような表現が苦手な人や付き合って日が浅い・付き合う前のカップルは辞めておいた方がいいかもしれません。
私はグロいシーンはかなり苦手ですが、直接的な描写はないため目を細めるくらいで大丈夫でした。また、びっくりするシーンは、予告にあるケースを覗き込んだイライザに「わ!」と半魚人が向かってくるシーンだけです。そのため、怖いのが苦手な人でも見れると思います。
人は外見じゃない・監督の思い
デル・トロ監督は作品についてこのように語っています。
「僕は『美女と野獣』が好きじゃない。『人は外見ではない』というテーマなのに、なぜヒロインは美しい処女で、野獣はハンサムな王子になるんだ?だから僕は半魚人を野獣のままにした。モンスターだからいいんだよ。」
私は全く前評判も予告も見ずに恋愛映画だと誘われて行ったので、正直ヒロインの女性が美人じゃなくて中年の美人とはいえない外見の女性で驚きました…。しかも、半魚人はずっと半魚人のままだし。
しかし、言葉があるにも関わらず周囲とうまく行かない人たちもいる中、イライザと半魚人は言葉は通じないものの互いに愛を育んでいくのです。だんだんと心を開いていき、お互いに少しずつコミュニケーションがとれていく様は見ていて心が温まります。
―――――以下ネタバレあり―――――
残忍なエリートの転落
また、私がなんだか心に残るのが、残忍なエリート軍人を演じたストリックランド(マイケル・シャノン)です。
ストリックランドは容赦なく半魚人を虐待し、さらには生体解剖までも提案します。イライザの同僚である黒人の同僚ゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)に対しても差別的な発言を繰り返し、イライザの首元の傷や言葉が話せないことに欲情し「抱きたい」と言う最低な男。
でも、金髪でスタイル抜群の美人な奥さんといい子そうな子どもがいても家庭では落ちつかないのか終始浮かない表情をし、土砂降りの中家を抜けて車の中で物思いにふけっていたり、職場でポジティブ思考という本を読んでいたり、狂気さだけでなくなんとも言えない空虚さも抱えています。
半魚人をラボから逃がすという大失態をしてしまい上官に責められた際「ずっとあなたに忠実な立派な部下でこれまでずっと失敗していないのに、たった一度のミスでまともじゃなくなるんですか?」って詰め寄ったものの冷たくあしらわれるシーンの表情は忘れられません。
そして半魚人に食いちぎられてなんとか接合した指がどんどん腐っていきながら、ストリックランドの心も狂気に満ち溢れていくのです。
イライザの正体は?
決して美人とはいえない中年女性のイライザは、言葉を話すことができません。
日々、同じようなルーティーンで仕事の準備をし、同僚である黒人の同僚ゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)の愚痴を聞きながら黙々と仕事をこなします。
そんなイライザは正体不明の半魚人と接するうちに心を惹かれていくのですが、作品上ではあまりにも展開が急すぎたり、半魚人に対する恐怖とかも全くないことに少し違和感も感じます。しかし、最後にイライザが銃に打たれたところを半魚人が水の中に連れていくところで、その謎は解けます。
それは…
イライザ自身が人魚であることです!
作品に散りばめられていた、イライザの謎であるこれらは全て最後のシーンで納得できます。
・半魚人に心が惹かれるのか
・半魚人に恐怖心を抱かないのか
・夜を好むのか(夜勤で働いている)
・水の中で自分を愛するのか(日課の自〇シーン)
・言葉が話せないのか
そして、子どもの頃に切られた首元の傷のせいでイライザは話せないと思われていました。しかし、水中に沈んでいく中で首元が映るシーンで傷が一瞬動いています。
そう、あれは傷ではありません。エラなのです。
イライザにとっての靴
イライザは靴をとても大切にしています。短い予告シーンの中でも靴を磨くシーンが何回が出てくることからも分かります。
実際に映画の中でも靴磨きはイライザの日課です。
イライザがここまで靴にこだわる理由は、地面である「普通」の世界と「普通ではない」イライザを繋げているのが靴だからではないかと考えられます。
そして、イライザが「普通」の世界から離れ、水の世界へ行くときにあれほど大切に毎日磨いていた靴はいとも簡単に脱げていってしまいます…。
デートは人を選ぶかも…?
デートで見るのは、正直人を選ぶと思います!!笑
ある程度エログロ耐性があり、そういうシーンを見ても気まずくならない人と見に行くことをおすすめします。
ただ、純愛ストーリーや各所に散りばめられた伏線やデル・トロ監督ならでは色づかいなど、映画好きの人であれば楽しめる素晴らしい作品であることは間違いありません。
見終わった後に「楽しかったねー」だけでなく「あれはああいう解釈だよね?」「これはここに繋がるよね」と話も弾みます。映画好きのカップルはぜひデートで行ってみてくださいね。
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(FUTARIDEライター kaya)